信号で止まったとき、ハンドルを切ったとき、段差を越えたとき。ふと「あれ、こんな音したかな」と思うことはありませんか。車は壊れる前に、たいてい音で知らせてきます。国家資格整備士で現役のスタンド店長として、音を聞いただけで場所の見当がつくようになるまでのことをお話しします。この記事を読んだあと、次に音が出たら「たぶんあそこだな」と言えるようになるはずです。相棒のノア(犬)・テト(猫)も一緒です。

音って言われても、うちの車がどこで鳴ってるかなんて分からへんわ。

分からなくて大丈夫。プロに伝えるときも「いつ」「どのあたりから」「どんな音」の3つだけでいい。この3つがそろえば、原因は半分絞れるんだ。
音を伝えるときの3点セット
整備の入口は、原因を絞り込む作業です。オーナーさんの一言で作業時間が半分になることもあれば、症状が再現できずに預かりになることもあります。伝えてほしいのは次の3つです。
ブレーキを踏んだとき、ハンドルを切ったとき、段差を越えたとき、発進のとき、速度が上がると。音が出る条件は、そのまま場所のヒントになります。「朝いちだけ」「雨の日だけ」も立派な情報です。
前か後ろか、右か左か、足元かボンネットの中か。正確でなくてかまいません。「なんとなく右前」で十分に絞れます。窓を開けて走ると、外から来る音か車内かが分かりやすくなります。
キーキー、ゴロゴロ、カタカタ、キュルキュル。擬音で構いません。むしろ擬音のほうが正確に伝わります。スマホで録音してきてくれると、それがいちばん早いです。窓を閉めて、静かな道で撮ってください。

音別・早見表
よく相談を受ける音を、原因の当たりと急ぎ具合でまとめました。あくまで目安なので、当てはまったからといって自己判断で終わらせないでください。
| 音 | 出るとき | 疑わしい場所 | 急ぎ具合 |
|---|---|---|---|
| キーキー | ブレーキを踏んだとき | ブレーキパッドの残量・鳴き | 早めに点検 |
| ゴーッ | 速度に比例して大きくなる | タイヤの偏摩耗・ハブベアリング | 早めに点検 |
| ゴトゴト | 段差・荒れた路面 | 足回りのブッシュ類・リンク | 早めに点検 |
| カタカタ | アイドリング中・低速 | 遮熱板のゆるみ・内装のビビリ | 時間があるとき |
| キュルキュル | 始動直後・雨の日 | ベルトの鳴き・張り | 早めに点検 |
| カラカラ | 走行中ずっと | 小石のかみ込み・遮熱板 | 時間があるとき |
| ウィーン | ハンドルを切ったとき | パワステ関係 | 早めに点検 |
| ゴリゴリ | ブレーキ・低速走行 | 金属同士の接触 | すぐ止める |
相談の多い5つを詳しく
ブレーキのキーキー
いちばん多い相談です。ブレーキパッドには、残りが少なくなると金属片がローターに当たって音を出す仕組みが付いています。あれは故障ではなく、設計どおりの「そろそろ交換ですよ」の合図です。
紛らわしいのが、朝いちや雨上がりだけ鳴るケース。これはローターの表面に薄いサビが浮いているだけで、何度かブレーキを踏めば消えます。走り出してすぐ消える音は心配いりません。踏むたびに毎回鳴るなら、点検の時期です。
速度に合わせて大きくなるゴーッ
「高速で気づいた」という相談が多い音です。スピードに比例して大きくなり、ハンドルを左右に振ったときに音が変わるなら、車輪の回転部分が疑わしくなります。タイヤが片べりしていても同じような音が出ます。
まずはタイヤを見てください。溝の減り方が内側と外側で違う、波打つように減っている。そんな状態なら、タイヤ側の可能性が高くなります。
段差でゴトゴト
足回りのゴム部品が痩せてくると、段差の衝撃を吸収しきれずに音が出ます。年数の経った車で増える症状で、放っておいても急に走れなくなるわけではありません。とはいえ乗り心地が落ちますし、車検で指摘される部位でもあります。
始動直後のキュルキュル
エンジンをかけた直後だけ、あるいは雨の日に鳴るキュルキュル。ベルトが滑っている音です。冬の朝や湿気の多い日に出やすく、暖まると消えることがほとんど。消えるからと放っておくと、ベルトが切れて走行不能になります。発電も冷却も止まるので、そこだけは軽く見ないでください。
カラカラ、パタパタ
エンジンの下や排気管の周りには、熱を遮る薄い金属の板が付いています。これが錆びて浮いてくると、振動でカラカラ鳴ります。音は派手ですが、直すのは意外と安く済むことが多い部類です。板を留め直すだけで終わる場合もあります。

この音が出たら、走らずに止まる
🚨 ゴリゴリ・ガリガリという金属音
ブレーキを踏むたびに金属がこすれる音がする場合、パッドが完全になくなって土台の金属がローターを削っている状態が考えられます。ブレーキの効きそのものが落ち、ローターまで交換になれば費用も跳ね上がります。安全な場所に停めて、ロードサービスを呼んでください。
次の音も、その場で走行をやめる判断をしてほしいものです。
- 警告灯と同時に出た音/油圧や充電の警告灯が点いているなら、エンジンを止めるのが先です
- 走行中の大きな打音/何かが外れた、踏んだ、当たった可能性があります
- 音とあわせてハンドルが振られる/タイヤか足回りに異常が出ています
- 焦げたにおいや煙をともなう音/説明は要りません。すぐ停めてください
よくある質問
Q1. 朝だけ鳴って、すぐ消えます。放置していい?
ブレーキの薄いサビやベルトの湿りが原因なら、走り出して消える音は様子見で問題ありません。気にしてほしいのは消えるまでの時間が長くなってきたとき。先月は10秒で消えていたのに今は1分鳴る、という変化は進行のサインです。
Q2. 見てもらうのはスタンド?ディーラー?
音の切り分けだけなら、どちらでも構いません。給油のついでにスタンドで「こんな音がするんです」と言ってもらえれば、その場で一緒に走って確認することもあります。保証期間内の車、電気系が絡みそうな音はディーラーが確実です。
Q3. 音が出たり出なかったりで、見てもらっても再現しません
これがいちばん困るパターンです。だからこそ録音が効きます。スマホの録音アプリを起動して助手席に置き、音が出る道を走ってみてください。プロが聞けば、音の質だけで候補を絞れます。撮れた日時と、そのときの速度や路面もメモしておくと完璧です。
Q4. 修理費はどれくらいかかりますか?
音の正体によって幅が大きい部分です。目安として、遮熱板の固定なら数千円、ベルト交換で1万円前後、ブレーキパッドで前後1万円台から、ハブベアリングや足回りの部品交換になると数万円というレンジになります。早く見てもらうほど安く終わるのは、どの音にも共通します。
同じ音でも、だんだん大きくなる・出る回数が増える・出る条件が広がるなら、確実に進んでいます。逆に何か月も変わらない音は、緊急性が低いことが多い。毎日乗っている人にしか分からない変化なので、そこを覚えておいてもらえると助かります。
- いつ鳴るか(ブレーキ・ハンドル・段差・発進・速度)を確認した
- 前後・左右のどのあたりから聞こえるか見当をつけた
- 擬音で言い表してみた(キーキー/ゴーッ/ゴトゴトなど)
- スマホで録音した
- 走り出してすぐ消える音か、ずっと続く音かを見た
- 先月より大きく・頻繁になっていないか思い返した
- 警告灯が点いていないか確認した
- 金属がこすれる音・焦げたにおいがある場合は、走らずに停めた
まとめ|音は、いちばん早い知らせ
車は、部品が完全に壊れる前に音で教えてくれます。多くの場合、その段階で手を打てば小さな出費で済みます。逆に、鳴っているのに乗り続けて、走行不能になってから運ばれてくる。この差が請求額の差になります。
音の正体を自分で突き止める必要はありません。「いつ」「どのあたり」「どんな音」の3つを持っていくだけで、プロは十分に動けます。気になったら、給油のついでにでも声をかけてください。

録音して持っていったらええんやな。ボクでもできそうや。
長い距離を走ったあとは、音以外にも見ておきたい場所があります。あわせてどうぞ。





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