毎週来ていた常連さんが、ある時期からぱたりと来なくなる。そういうことが年に何度かあります。しばらくして奥さんが歩いて来られて、免許を返したと聞く。スタンドに立っていると、車を降りるという選択が、書類の話である前にその人の生活が変わることだと分かります。国家資格整備士・保険募集人で現役のスタンド店長として、返納したあとに残る手続きを整理します。相棒のノア(犬)・テト(猫)も一緒です。

免許を返したら、それで終わりとちゃうの?

そこからが本番なんだ。車と保険が残る。とくに保険は、放っておくと長年かけて育てた等級が消える。もったいない話だよ。
①免許を返す(警察署か運転免許センター・30分ほど)
②車を決める(家族に譲る/売る/登録を消す)
③保険を止める。ここで中断証明書をもらっておくと、等級を家族に引き継げます。
①だけ済ませて②③を放置すると、乗らない車に税金と保険料がかかり続けます。

迷っている人が、いちばん多い
給油に来られるお客さんと話していると、「そろそろ返そうか」と迷っている方がとても多いと感じます。すでに決めた人より、迷っている人のほうが多いくらいです。そしてもうひとつ、よく聞く言葉があります。
「子どもに、もう車に乗るのはやめてくれと言われた」
言う側にも理由があります。心配だからです。ただ、言われた側には、買い物も通院も自分でやってきたという積み重ねがある。どちらが正しいという話ではなく、両方が本当だから難しい。
返すか返さないかは、家庭ごとに答えが違います。決めきれないうちでも、保険の中断証明書には申し出の期限があります。しかもこの期限は保険会社ごとに違い、解約から13か月で締め切る会社が少なくありません。結論を急がなくても、期限のある手続きだけ先に知っておくと、あとで損をせずに済みます。
返納の手続きは30分ほどで終わる
手続き自体はあっけないほど簡単です。警察署か運転免許センターの窓口で申請します。
警察署、または運転免許センター。受付時間や取扱いの範囲は都道府県で違うので、行く前に電話で確認しておくと二度手間になりません。
返納そのものに手数料はかかりません。本人が行くのが原則です。
同時に申請できます。写真1枚(6か月以内・縦3cm×横2.4cm)と、手数料が1,100円ほど。金額は都道府県で確認してください。
運転経歴証明書は、身分証になる
返納をためらう理由でよく挙がるのが「身分証がなくなる」です。ここは心配いりません。運転経歴証明書は、運転免許証に代わる公的な本人確認書類として使えます(平成24年4月1日以降に交付されたもの)。銀行の窓口でも使えます。
加えて、提示すると特典を受けられる場合があります。タクシー運賃の1割引、バスの割引など。内容は自治体や事業者ごとに違うので、住んでいる地域の警察や役所のページで確認するのが確実です。
運転経歴証明書は、返納したあといつでも取れるわけではありません。返納の日から5年以内に本人が申請する必要があります。返納と同時に取っておくのがいちばん確実です。
残った車を、どうするか
ここからが本題です。選択肢は3つあります。
| 選択肢 | 向いている場合 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 家族に譲る | 同居の子や孫が乗る。車がまだ元気 | 名義変更が必要。保険の名義と等級もあわせて動かす |
| 売る | 年式が新しめで、走行にも問題がない | 買取店を複数比べる。値がつかない場合は次の選択肢へ |
| 登録を消す(抹消) | 古い、動かない、値段がつかないと言われた | 解体を伴う永久抹消なら重量税も戻る。軽自動車税は戻らない |
返納する年齢まで乗った車は、年式が古いことが多いものです。ディーラーで値段がつかないと言われても、それは「その店では扱えない」という意味であることが少なくありません。動かない車や古い車を専門に引き取る業者もあります。
🚗 返納する年齢まで乗った車は、年式が古いことがほとんどです。ディーラーで値段がつかないと言われても、廃車買取の専門店なら事故車・故障車・不動車も引き取ります。レッカー代や書類の代行費用はかからず全国対応で、本人が動けなくても手続きを任せられます。申し込むと電話で確認の連絡が入るので、電話に出られる時間に申し込むと話が早く進みます。

とりあえず置いといたらあかんの? 思い出もあるやろし。

気持ちは分かるよ。ただ置いてあるだけで自動車税は毎年かかる。数年たつと、思い出の値段としては高くつく。急がなくていいから、期限だけは押さえておこう。
保険は「解約」ではなく「中断」にする
ここがこの記事でいちばんお伝えしたいところです。長年無事故で来た方は、等級が上がっています。20等級なら保険料は大きく割り引かれた状態です。そのまま解約すると、この等級は消えます。
解約ではなく中断証明書を発行してもらうと、等級を保管しておけます。そして、ここが大事なところです。
返納した本人がもう車に乗らなくても、配偶者や同居の子・孫が新しく保険に入るときに、その等級を使えます。20等級を引き継げば、若い人の保険料はかなり変わる。返納が、家族にとっては保険料の下がるきっかけにもなるわけです。

| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 申し出の期限 | 保険会社ごとに違う。解約・満期から13か月以内としている会社が多い |
| 等級の条件 | 中断時点で7等級以上であること |
| 有効期間 | 中断日から10年。この間に新しい契約を始めれば引き継げる |
| 引き継げる相手 | 本人、配偶者、同居の親族 |
細かい条件は保険会社によって違います。返納を決めたら、車を手放す前に自分の保険会社か代理店へ一本電話を入れておくと確実です。等級の仕組みそのものは、別の記事で詳しく書いています。
「もう乗るのはやめて」と言われたら
言われた側にとって、これはなかなかこたえる言葉です。ただ、言う側も意地悪で言っているわけではない。心配が形を変えて出てきただけです。
間に立つことが多い立場から言えるのは、いきなり全部を決めなくていいということです。返す・返さないの二択にすると、話がこじれます。
| 間に置ける段階 | 内容 |
|---|---|
| 夜の運転をやめる | 暗くなってからの運転だけ控える。距離は減らさない |
| 行き先を絞る | 買い物と通院だけにして、遠出は家族が乗せる |
| サポート機能のある車に替える | 踏み間違い防止などが付いた車に乗り替える |
| そのうえで返納を考える | 段階を踏んだあとなら、本人も納得しやすい |
家族の側にひとつだけ。「危ないから」より「送っていくよ」のほうが伝わります。 前者は運転を否定する言葉ですが、後者は代わりの足を差し出す言葉です。車を降りたあとの生活が見えていれば、返納は怖くなくなります。
よくある質問
Q1:免許を返納したら身分証はどうなりますか?
A:運転経歴証明書が身分証の代わりになります。平成24年4月1日以降に交付されたものは、運転免許証に代わる公的な本人確認書類として扱われます。ただし申請できるのは返納から5年以内なので、返納と同時に取っておくのが安心です。
Q2:免許返納後、車の保険はすぐ解約していいですか?
A:解約する前に中断証明書を発行してもらってください。等級は10年間保管でき、配偶者や同居の親族が新しく車を持つときに引き継げます。注意したいのが申し出の期限で、解約や満期から13か月以内としている会社が多く、保険会社ごとに違います。手放すと決めたらすぐ連絡するのが確実です。7等級以上であることも条件になります。
Q3:乗らない車を置いたままだと、どうなりますか?
A:動かさなくても自動車税は毎年かかります。車検も切れ、バッテリーやタイヤも傷んでいく。抹消登録をすれば翌月から課税は止まり、普通車なら未経過分が月割で戻ります。置いておく期間が長いほど、手取りは減る一方です。
Q4:家族が返納を嫌がるときはどうすればいいですか?
A:返す・返さないの二択にしないことです。夜の運転をやめる、行き先を絞る、サポート機能付きの車に替える、という段階があります。生活の足をどう確保するかを先に決めておくと、話が進みやすくなります。
まとめ:返してからが手続きの本番
免許を返すこと自体は、窓口で30分ほどの手続きです。残るのは車と保険。ここを片づけないまま置いておくと、乗らない車に税金がかかり、育ててきた等級も消えていきます。

長いこと無事故で走ってきた人ほど、いい等級を持っている。それを孫に渡せると知ったら、返納の意味も少し変わってくると思うんだ。
- 返納と同時に運転経歴証明書を申請した(写真1枚・1,100円ほど)
- 住んでいる自治体の特典を調べた
- 車を「譲る・売る・抹消する」のどれにするか決めた
- 売る場合、値がつかないと言われても別の業者に聞いた
- 保険会社に連絡し、解約ではなく中断証明書を頼んだ
- 等級を引き継ぐ家族がいるか確認した(配偶者・同居の親族)
- 自賠責保険の解約返戻金を申請した
- 抹消したら、自動車税の還付の案内が届くか確認した
迷っている段階でも、期限のある手続きだけは知っておいて損はありません。運転経歴証明書は返納から5年以内。中断証明書は、車を手放すと決めたらすぐ保険会社へ電話。この2つだけ覚えて帰ってもらえたら十分です。






コメント