「車検、20万円近くかかりますね」。見積もりをお渡しすると、お客様の反応はだいたい決まっています。「高い」と声が出て、少し黙ってから「そっか」。そして最後に、「乗り換えたほうがいいかなー?」と聞かれます。
私の店では車検の見積もりを出す一方で、車の下取りや買取も扱っています。直して乗ってもらっても、売ってもらっても、どちらでも商売になる立場です。
だからこそ言えるのは、20万円という金額だけで、買い替えを決めるのは早いということです。見積もりの中身を仕分けると、今回払うべきお金と、相談して減らせるお金が見えてきます。買い替えるなら損をしない順番もあります。
- 車検の見積もりが20万円近い
- 直すか買い替えるか決められない
- 見積もりの見方が分からない
- ほかの店と比べたいが比べ方が不明

20万円やで。もう買い替えたほうが早いんちゃう?

その前に、見積もりを3つに分けてみよう。答えはそこに書いてあるよ。
車検20万の見積もりの中身

車検の見積もりは、一見すると細かい項目が並んだ1枚の紙です。けれども中身は、大きく3つのお金に分けられます。法律で決まっている費用、車検をするための基本料金、そして整備と部品の代金です。20万円の見積もりで大きく動くのは、3つ目の整備と部品の代金です。どこを削れて、どこは削れないのかを知ると、20万円の重さが変わって見えてきます。
| お金の種類 | 中身 | お店による差 |
|---|---|---|
| 法定費用 | 重量税・自賠責・印紙代 | ほぼ同じ |
| 基本料金 | 点検・検査・手続き | お店で違う |
| 整備・部品代 | 交換する部品と工賃 | 車の状態で大きく違う |
どこでも同じ法定費用
1つ目は、重量税と自賠責保険料、検査の印紙代です。重量税と自賠責はどこで車検を受けても同じ金額で、印紙代もお店の種類によるわずかな違いしかありません。
たとえば1.5トンまでの普通車(エコカー減税の対象外)なら、重量税は2年分で24,600円です(国土交通省)。自賠責は24か月で17,650円ですが、2026年11月1日以降に始まる契約から18,560円に上がります。車検の満了日が10月でも、自賠責は11月から始まる車がほとんどです。
| 項目(普通車・2年分) | 金額 |
|---|---|
| 重量税(1.5トンまで・13年未満) | 24,600円 |
| 重量税(同・13年経過) | 34,200円 |
| 自賠責(2026年10月末までに始まる契約) | 17,650円 |
| 自賠責(2026年11月1日以降に始まる契約) | 18,560円 |
呼び方が違う基本料金
2つ目は、点検や検査、書類の手続きにかかるお金です。見積もりには「点検料」「代行費用」「基本料金」など、お店ごとにいろいろな名前で書かれています。
名前は違っても、中身はどれも車検をするためにかかる費用です。比べるときは名前ではなく、法定費用と部品代を除いた金額で比べます。この比べ方は、あとの章で詳しくお話しします。
20万円を決める整備と部品代
3つ目が、交換する部品の代金と、その工賃です。法定費用の重量税と自賠責は、13年未満の普通車なら2つで4万円ほどです。
つまり20万円の見積もりなら、残りの15万円前後は、基本料金と整備・部品代でできています。ここは車の状態と、どこまで直すかで大きく変わる部分です。次の章で、最近とくに金額を押し上げている部品を見ていきます。
車検20万に膨らむ2つの部品

見積もりが20万円近くなる車には、共通点があります。最近、金額を押し上げているのはタイヤとバッテリーの2つです。どちらも消耗品なので、交換の時期が車検と重なると一気に高くなります。しかもこの2つは、ここ数年で1本あたり、1個あたりの値段そのものが上がってきました。部品ごとに、なぜ高くなるのかを順に見ていきます。見積もりに載っていたら、その理由がここで分かるはずです。
タイヤは大きく高くなった
最近の車は、タイヤの外径が大きくなる傾向があります。大きいタイヤほど、1本あたりの値段も上がります。
そこに値上げが重なりました。ブリヂストンは2026年9月1日から、国内市販用タイヤを平均5%値上げしています。ほかの大手メーカーも同じ時期に値上げを発表しました。4本まとめて替えると、見積もりの中でいちばん大きな項目になることもあります。溝の深さが1.6mm未満なら車検に通らないので、この場合は交換が必要です。
アイドリングストップ車の電池
信号で止まるたびにエンジンが止まる車は、専用のバッテリーを使います。止まっている間も電気を使い、また始動するので、普通の車よりバッテリーの負担が大きいからです。
電池工業会によると、アイドリングストップ車に普通の車用のバッテリーを付けると、アイドリングストップしない、寿命が短くなるといったトラブルの原因になります。専用品が必要なので、普通の車より交換の費用が高くなります。アイドリングストップが働かなくなるのは、弱ってきた合図の1つです。
ハイブリッド車の補機バッテリー
ハイブリッド車には、走るための大きな電池とは別に、車の電気を動かす小さなバッテリーがあります。これを補機バッテリーと呼びます。
トヨタは、日本の規格(JIS)のバッテリーを積んだハイブリッド車について、車種専用品のため市販のバッテリーには交換できないと案内しています。選べる商品が限られるぶん、交換の費用は高くなりがちです。見積もりに載っていたら、今回交換が必要な状態かを聞いてみてください。
- タイヤ:溝の深さと本数
- タイヤ:今回4本とも必要か
- バッテリー:専用品かどうか
- バッテリー:弱っている根拠
車検の基本料金の比べ方

見積もりが高いと感じたら、ほかのお店と比べてみるのも1つの方法です。私の店にも、数は少ないものの、ほかの店の見積もりを持って来られる方がいます。比べるときは、合計の金額ではなく中身をそろえて比べます。合計だけで比べると、整備の量が違う見積もりを並べることになり、安いほうが得とは限らないからです。見積もりを比べるときの3つのコツを紹介します。
法定費用を除いて比べる
法定費用は、どこで車検を受けてもほぼ同じ金額です。ここを含めたまま比べても、お店ごとの差は見えてきません。
まず見積もりから重量税・自賠責・印紙代を消して、残りの金額を並べます。これだけで、比べるべき金額がぐっと小さくなり、差がどこにあるかが分かります。
名前でなく中身で比べる
「点検料」「代行費用」「基本料金」「検査料」など、お店によって書き方はばらばらです。名前が違うと、別のお金に見えてしまいます。
けれども、どれも車検をするためにかかる費用という点では同じものです。名前の違いに迷わず、車検そのものにかかる費用をひとまとめにして比べます。分からない名前があれば、何の費用かをそのお店に聞けば教えてもらえます。
整備の中身をそろえて比べる
もう1つ大事なのが、整備の中身です。A店はタイヤ4本とバッテリーを交換、B店はどちらも交換なし、という見積もりなら、B店が安いのは当然です。
交換する部品が同じかどうかを見ないと、正しく比べられません。安い見積もりは、交換を先に延ばしているだけという場合もあります。次の車検までに必要になる部品なら、いずれ払うお金です。

安いとこ選んだら、あとでまとめて来ることもあるんやな。

そうなんだ。合計より、何を替えるかを見比べるのがコツだよ。
整備を決める2つの質問

見積もりに並ぶ部品は、どれも交換が必要なものです。とはいえ、すべてを今回まとめて替えるかどうかは相談できます。私の店では、予算と、あと何年乗るかをお聞きしてから整備の項目を決めています。この2つが分かると、今回やるべき整備と、次に回せる整備の線を引けるからです。見積もりをもらったら、お店にこの2つを伝えるところから始めてみてください。
予算を先に伝える
「今回は10万円くらいに収めたい」と先に伝えると、お店は優先順位をつけて見積もりを組み直せます。
予算を言うのは、恥ずかしいことではありません。予算が分かれば、車検に通すための整備を先にし、それ以外は相談しながら決められます。黙って全部を払うより、ずっと納得して車検を受けられます。
あと何年乗るかを伝える
もう1つは、この車にあと何年乗るつもりかです。次の車検で手放すつもりなら、長持ちさせるための整備は減らせることがあります。
反対に、あと4年、6年と乗るなら、今のうちに替えておいたほうが結果的に安く済む部品もあります。乗る年数によって、同じ部品でも「今替えるべきか」の答えが変わります。まだ決めていないなら、「決めていない」と伝えるだけでも十分です。
必須とおすすめを分けて聞く
見積もりの項目は、車検に通すために必要なものと、故障を防ぐためにすすめているものに分けられます。
どれがどちらに当たるのかは、遠慮せずにお店に聞いて大丈夫です。ブレーキやタイヤのように安全に関わる部品は、おすすめの段階でも早めの交換が安心です。先に延ばすなら、いつまでに替えればよいかも一緒に聞いておきます。
- 今回の予算
- あと何年乗るつもりか
- 車検に必須の整備はどれか
- 延ばせる整備の期限
車検20万で買い替える目安

見積もりを仕分けても、やはり高い。そんなときに買い替えを考える方は、実際に私の店にもいます。決め手になりやすいのは、走行距離と年式の2つです。この2つが進んだ車は、今回20万円をかけて直しても、この先も高い修理が続く見込みが高くなるからです。反対に、どちらもまだ若い車なら、今回だけの出費で済むことも多くあります。判断の目安を3つに分けてお話しします。
走行距離で見る
走行距離が延びるほど、タイヤやバッテリーのような消耗品に加えて、足回りやエンジンまわりの部品も弱ってきます。
今回の見積もりが消耗品の交換だけなら、次の車検までは大きな出費がないこともあります。走行距離が多い車ほど、次の車検でも別の部品で高くなりやすいと考えておくと、判断を誤りにくくなります。
年式で見る
年式が古い車は、部品の劣化に加えて税金も上がります。新車の登録から13年を過ぎると、自動車税も重量税も重くなる仕組みです。
1.5トンまでの普通車なら、重量税は2年分で24,600円から34,200円になります(国土交通省・エコカー減税の対象外の場合)。13年目の車検は、部品と税金の出費が同時に来る時期です。詳しくは13年目の車は乗り続けていいかにまとめました。
高い修理が続くサイン
これまでの整備の記録も、判断の材料になります。前回の車検でも高額だった、車検の合間にも修理が続いた、という車は注意が必要です。
一方で、オイル交換などの手入れをきちんと続けてきた車は、年数の割に元気なことがよくあります。記録が残っている車なら、20万円を払ってでも乗り続ける価値があります。迷ったら、整備の記録と見積もりを並べて考えてみてください。
- 走行距離が多い
- 13年目の車検が近い
- 前回の車検も高額だった
- 車検の合間にも修理が続く
買い替えは車検前に売る

買い替えを決めたなら、今の車は車検を通す前に売るのが基本です。車検を通しても、かけた費用がそのまま買取の金額に上乗せされることは少ないからです。20万円をかけて直してから売ると、その分が手元に戻らない可能性があります。車検の見積もりをもらったタイミングは、今の車がいくらになるかを知るのにちょうどいい時期です。売るときの進め方を3つに分けてお話しします。
車検を通してから売ると
車検が長く残っている車は、査定で有利になることがあります。とはいえ、車検にかかった20万円がそのまま戻ってくるわけではありません。
とくにタイヤやバッテリーを新しくしても、査定額はその代金ほどは上がらないのが普通です。売ると決めているなら、車検の前に査定を受けたほうが手元に残るお金は多くなりやすいです。
見積もりと同じ時期に査定
車検の見積もりと、買取の査定は同じ時期に受けておくと比べやすくなります。直すといくら、売るといくら、が並ぶからです。
車検の満了日が近づくと、慌てて決めることになりがちです。満了日の1〜2か月前に、見積もりと査定の両方をそろえておくのが理想です。車検は満了日の2か月前から受けられるので、この時期なら両方の道を選べます。
1社に直接申し込む
はじめて車を売るなら、一括査定より、1社に直接申し込むほうが落ち着いて進められます。私の店のお客様からは、一括査定で売ったあとに細かい点を理由に減額されたという話も聞きました。
たとえば次の2社は、ネットから無料で査定を申し込めます。金額を聞いてから、売るか車検を通すかを決めれば大丈夫です。ディーラーの下取りと比べる場合は、ディーラーの下取りが安い理由も参考になります。
乗り換えならリースも

買い替えを考えたとき、次の車の買い方に悩む方も少なくありません。私の店にも、カーリースを使っているお客様が20代から60代まで幅広くいらっしゃいます。車検のたびの大きな出費を避けたい人には、カーリースも有力な選択肢です。車が生活に欠かせない地域では、通勤から買い物まで毎日使うからこそ、出費の波をなくしたいという声を聞きます。選ばれている理由と、契約前に確かめたいことをまとめました。
まとまったお金が不要
リースを選ぶ理由として多いのが、車両代の高さです。新車の値段が上がり、まとめて払うのが難しくなりました。
カーリースなら、頭金なしの月額で新しい車に乗れる商品が多くあります。手元のお金を残したまま、次の車に乗り換えられるのが強みです。今の車の買取額を、当面の出費に回す考え方もあります。
車検代を月額にならす
もう1つの理由は、お金の管理のしやすさです。月額に税金やメンテナンス代が含まれている商品があります。
今回のように、車検の年に20万円がまとめて来る心配が減るわけです。毎年5月の税金や車検の出費が、毎月の定額にまとまるのが管理しやすいという声につながっています。含まれる中身は商品ごとに違うので、申し込む前に確かめてください。
契約前に確かめること
リースには、走る距離の上限や、途中で解約するときの決まりがあります。ここを知らずに契約すると、あとで思わぬ費用がかかることがあります。
月額の安さだけで決めず、距離の上限と途中解約の条件は必ず先に確かめます。気をつけたい点はカーリースはやめとけ?デメリットと総費用比較で詳しく書きました。
よくある質問
Q1. 車検で20万円は高すぎますか?
金額だけでは判断できません。法定費用を除いた残りが、どの部品の交換でできているかを見ると、高いかどうかが分かります。タイヤ4本やバッテリーの交換が入っていれば、20万円近くになることもあります。
Q2. 見積もりの一部だけ断ってもいいですか?
車検に通すための整備以外は、お店と相談して決められます。予算と、あと何年乗るかを伝えると、優先順位をつけてもらえます。ブレーキやタイヤなど安全に関わる部品は、早めの交換が安心です。
Q3. ほかの店で見積もりを取るのは失礼ですか?
失礼ではありません。比べるときは、法定費用を除いた金額と、交換する部品が同じかどうかを見ると正しく比べられます。
Q4. 車検が近い車でも売れますか?
売れます。車検が残っているうちなら、査定の店まで自分で運転して行けます。売ると決めているなら、車検を通す前に査定を受けるのが基本です。
Q5. ハイブリッド車のバッテリーは自分で買って替えられますか?
トヨタは、日本の規格(JIS)のバッテリーを積んだハイブリッド車は車種専用品のため、市販のバッテリーには交換できないと案内しています。車種によって違うので、お店か販売店に確かめてください。
Q6. 自賠責の値上げ前に車検を受ければ安くなりますか?
継続の車検では、自賠責は今の契約が切れる日から始まります。受ける日を早めても始まる日は動かないので、安くはなりません。詳しくは自賠責の値上げの記事で解説しています。
まとめ
車検の見積もりが20万円でも、すぐに買い替えと決める必要はありません。法定費用、基本料金、整備と部品代の3つに分けると、動かせるお金が見えてきます。予算とあと何年乗るかを伝えれば、見積もりは組み直せます。
そのうえで、走行距離が多く年式も古い車なら、車検の前に査定を受けて売る道も考えられます。次の車の買い方に迷ったら、月額で乗れるカーリースも比べてみてください。
- 見積もりは3つに分けて見る
- 法定費用はどこでもほぼ同じ
- タイヤとバッテリーが高くなった
- 予算と乗る年数を伝える
- 売るなら車検を通す前
まずは手元の見積もりを3つに分けてみて、迷ったら今の車の査定額も並べてみると決めやすくなります。車検に落ちやすい項目は車検で落ちる項目のチェックリストにまとめています。

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