車検の受付をしていると、秋から冬にかけて「今年は何か変わりましたか」と聞かれます。今年の答えは、これです。2026年11月1日から、自賠責保険の保険料が上がります。13年ぶりの改定です。
国家資格整備士・保険募集人・FP3級。ガソリンスタンドに勤めて20年、店長になって15年になります。制度の中身と、店の現場で見えていることの両方から書きます。相棒のノア(犬)・テト(猫)も一緒です。

自賠責って自分で選べへんやつやろ。上がるって言われても、どうしようもなくない?

ほとんどの人はそう。それに「早めに車検を通せば旧料金」という話も、実際にはほとんど当てはまらないんだ。自賠責が始まる日の決まり方に、理由があってね。
2026年11月1日から、自賠責保険料が13年ぶりに上がります(平均6.2%の引き上げ)。
上がるかどうかを決めるのは、手続きをした日ではありません。保険期間が始まる日です。10月31日までに始まる契約なら、いまの料金のままです。
ここまではよそでも書かれています。問題はその先でした。継続の車検では、新しい自賠責が始まる日は「車検を受けた日」ではなく「いま入っている自賠責が切れる日」になります。だから車検を早めに受けても、始まる日は1日も動きません。
旧料金で掛けられるのは、車検の満了日が2026年9月末までの方(いつもどおり受ければ済みます)と、10月中に新車を登録する方だけです。それ以外は避けられません。取り返すなら任意保険のほうです。
自賠責保険が、2026年11月1日から上がります
自賠責保険は、車を持っている人全員が入る保険です。車検を受けるときにセットで掛けるので、意識せずに払っている方も多いと思います。
この保険料が2026年11月1日から、平均6.2%引き上げられます。前回の改定は2013年4月なので、13年ぶりです。自賠責は事故の相手方への補償にあてるお金で、支払いの見通しにあわせて国が料率を決めています。
いくら上がるのか、表にしました
本土(沖縄県と離島を除く)の、自家用乗用車と軽自動車の保険料です。新車のときが37か月、そのあとの継続の車検は24か月が中心になります。
| 車種 | 契約期間 | 現行 | 2026年11月1日から | 差額 |
|---|---|---|---|---|
| 自家用乗用車 (普通車) | 24か月 | 17,650円 | 18,560円 | +910円 |
| 25か月 | 18,160円 | 19,070円 | +910円 | |
| 37か月 | 24,190円 | 25,180円 | +990円 | |
| 軽自動車 | 24か月 | 17,540円 | 18,660円 | +1,120円 |
| 25か月 | 18,040円 | 19,170円 | +1,130円 | |
| 37か月 | 24,010円 | 25,330円 | +1,320円 |
沖縄県と離島は本土と別の料金が設定されています。該当する地域にお住まいなら、金額そのものが別です。
あまり知られていない話:軽自動車のほうが高くなります
表をもう一度見てください。24か月で比べると、いまは軽自動車のほうが110円安いのに、11月1日からは軽のほうが100円高くなります。
軽の値上げ幅が1,120円と、普通車の910円より大きいためです。金額の順番が入れ替わります。

え、軽のほうが高なるん?

そう。「軽は自賠責も安い」という言い方は、11月からは通じなくなる。13年ぶりの改定でここが引っくり返るのは、まだあまり知られていないと思う。
新車(乗用車)の最初の車検は3年後ですが、掛ける自賠責は36か月ではなく37か月です。車検が切れる日と保険が切れる日を同じにすると、手続きが1日でも遅れたときに無保険になるためです。
3年目からの車検では、この余った1か月を捨てません。古い自賠責が切れる日から24か月を継ぎ足します。だから何度車検を受けても、「自賠責の満了日=車検の満了日+1か月」がずっと保たれます。ここが今日の話の土台です。
決め手は「保険期間の開始日」です。手続きした日ではありません
ここがいちばん間違えやすいところです。新しい料金が使われるのは、2026年11月1日以降に保険期間が始まる契約からです。
窓口で手続きをした日ではありません。その保険がいつから効き始めるかで決まります。
たとえば10月28日に手続きをしても、保険の開始日が11月1日になっていれば、かかるのは新しい料金です。逆に10月31日から始まる契約なら、手続きが何日であっても現行料金です。
見るのは書類の日付欄だけ。「保険期間」の始まりが10月中かどうかを確かめてください。
なぜ「早めに車検」では旧料金にならないのか
値上げが決まってから、店でこう聞かれるようになりました。「早めに車検を受ければ、旧料金のままですよね」。ネットの記事にもそう書かれています。
実際に書類を切ってみると、そうはなりませんでした。理由は、ひとつ上で書いた「1か月のズレ」にあります。
新しい自賠責が始まるのは、古いのが切れる日
継続の車検で自賠責を掛け替えるとき、新しい契約は受検日からではなく、いま入っている契約が切れる日から始まります。前の期間と重ねても、あいだを空けても意味がないためです。
そして古い契約が切れる日は、車検の満了日より1か月あとでした。ここが動かないので、受検日をいくら早めても始期日は動きません。
車検の満了日が2026年11月20日の車で追ってみます。
| 見るところ | 日付 |
|---|---|
| 車検の満了日 | 2026年11月20日 |
| いま入っている自賠責の満了日 | 2026年12月20日(満了日+1か月) |
| 10月中に車検を前倒しで受ける | 受検日は10月 |
| 新しい自賠責が始まる日 | 2026年12月20日(古い契約が切れる日) |
| かかる料金 | 新料金 |
車検の満了日が11月・12月の車は、10月中に受けても新料金です。自賠責の始まる日が12月・1月になるためです。
満了日が10月の車も同じで、自賠責の始まりは11月。前倒しで値上げを避けられる人は、継続の車検にはいません。

では、旧料金で掛けられるのは誰か
逆から数えます。自賠責の始まる日が10月31日までに収まる人です。
| 当てはまる方 | やること | 結果 |
|---|---|---|
| 車検の満了日が2026年9月末まで | いつもどおり受ける | 自賠責の始まりが10月中に収まります。旧料金 |
| 10月中に新車を登録する | 登録の月を販売店に相談する | 37か月ぶんが旧料金。990円お得 |
| 車検が切れて自賠責も切れている | 10月中に掛け直す | 始まる日を10月に置けます |
| 上記以外のすべての方 | — | 新料金。避けようがありません |
いちばん効くのは2番目です。37か月ぶんの差額は990円。大きな額ではありませんが、いま新車の納車を待っている方なら、登録の月を相談する余地はあります。
1番目の方は特別なことを何もしなくてかまいません。いつもどおり満了日までに受ければ、それで旧料金に収まります。
車検の前倒しそのものは、2か月前までできます
誤解のないように書いておくと、前倒しの制度そのものは事実です。2025年4月から、車検は満了日の2か月前から受けられるようになりました。以前は1か月前からです。
しかも2か月前に受けても、次の満了日は繰り上がりません。早く受けたぶんを損しない制度で、予定を組みやすくする意味では使えます。ただ、自賠責の値上げを避ける目的では使えません。始まる日が動かないからです。
受けられるのは満了日の2か月前からです。それより早く受けると、次の満了日が受けた日から数え直しになり、車検の有効期間が短くなります。
満了日が2027年2月の車を10月に通すと、数か月ぶんを捨てることになります。しかも、それで自賠責が旧料金になるわけでもありません。捨て損です。

車検そのもので落ちやすいところは、こちらにまとめています。受ける前にひと通り目を通しておくのがおすすめです。

店で毎年聞かれる「自賠責、もう少し安くなりませんか」
車検の見積もりを出すと、ときどきこう聞かれます。整備の内容ではなく、自賠責の金額を指してのことです。
答えはいつも同じで、自賠責はどこで入っても1円も変わりません。国が車種と期間ごとに金額を決めているためです。うちのようなスタンドでも、ディーラーでも、町の整備工場でも同じです。

ほな、比べる意味ないってこと?

自賠責はね。比べて差が出るのは、整備の工賃と、任意保険のほうだよ。見積もりを見るときは、自賠責と重量税の欄は飛ばしていい。あそこはどこも同じだからね。
車検の見積書に並ぶ金額は、性質が2つに分かれます。自賠責保険料・自動車重量税・検査手数料は、どこで受けても同じ金額です。差が出るのは整備の工賃と部品代、それに任意保険です。
自賠責と任意保険の役割の違いは、こちらで詳しく書いています。

自賠責は下げられません。だから任意保険のほうを見ます
11月からの値上げは、こちらでどうにかできるものではありません。動かせるのは隣にある任意保険のほうです。
| 自賠責保険 | 任意保険 | |
|---|---|---|
| 金額の決まり方 | 国が決める | 保険会社ごとに違う |
| 会社による差 | まったくない | 同じ条件でも差が出る |
| 見直せるか | 見直しようがない | いつでも見直せる |
| 補償の範囲 | 相手の身体のみ | 相手の物・自分の車・自分のけが |
保険募集人として見ていると、同じ車・同じ等級・同じ補償でも、会社が変わると保険料が変わります。数千円のこともあれば、もっと大きく動くこともあります。自賠責の910円や1,120円と比べると、手をつける価値があるのはこちらです。
いまの保険料が高いのか安いのか、比べたことがないという方は、一度だけ見ておくと基準ができます。
保険料そのものを下げる方法は、この記事にまとめています。

軽自動車に乗っている方は、維持費の計算がずれます
軽の自賠責は24か月で17,540円でした。年に直すと8,770円です。これが18,660円になると、年あたり9,330円になります。
1年で560円の差です。大きな額ではありませんが、維持費を計算して比べていた方は、その前提が変わります。軽の年間維持費を出した記事もあるので、11月以降に読む方は自賠責の欄を読み替えてください。

自動車税のほうは今回の改定と関係ありません。払い方で得をする方法は別にあります。

よくある質問
Q1:自賠責保険は2026年11月からいくら上がりますか?
A:24か月契約で、自家用乗用車が17,650円から18,560円へ910円、軽自動車が17,540円から18,660円へ1,120円の値上げです(沖縄県・離島を除く)。全体では平均6.2%の引き上げで、2013年4月以来13年ぶりの改定になります。継続の車検で使う24か月契約は、自家用乗用車が18,560円、軽自動車が18,660円になります。
Q2:早めに車検を通せば、値上げを避けられますか?
A:継続の車検では避けられません。新しい自賠責が始まる日は、車検を受けた日ではなく「いま入っている自賠責が切れる日」になるためです。その日は車検の満了日より1か月あとなので、満了日が11月・12月の車は10月中に受けても、始まりが12月・1月になって新料金です。旧料金で掛けられるのは、車検の満了日が2026年9月末までの方と、10月中に新車を登録する方に限られます。
Q3:車検を早く受けると、有効期間は短くなりませんか?
A:満了日の2か月前からなら短くなりません。2025年4月から、満了日の2か月前に受けても次の満了日は繰り上がらない制度になりました。それ以前は1か月前からで、2か月前に受けると期間が数え直しになっていました。2か月より前に受けた場合は、いまも数え直しになります。
Q4:自賠責保険は、どこで入っても同じ金額ですか?
A:同じです。車種と契約期間が同じなら、ディーラーでも整備工場でもガソリンスタンドでも1円も変わりません。国が料率を決めているためです。車検の見積もりを比べるときに差が出るのは、整備の工賃と部品代のほうです。自賠責保険料・自動車重量税・検査手数料の3つは、どこで受けても同額になります。
Q5:自賠責が値上げされると、任意保険も上がりますか?
A:連動して上がるものではありません。自賠責は国が料率を決め、任意保険は保険会社がそれぞれ決めています。別々の仕組みです。ただし任意保険のほうも、修理費の上昇などを理由に見直しが続いています。自賠責の改定をきっかけに、任意保険の内容も一度見ておくと無駄が見つかることがあります。
まとめ:ほとんどの方は、動かなくていい
「早めに車検を」と書かれた記事を見て、予約を入れようとした方がいるかもしれません。継続の車検なら、その必要はありません。受ける日を早めても、自賠責が始まる日は動かないためです。
金額としては910円や1,120円です。大きな話ではありません。ただ、効かない対策のために予定を動かすのは、それこそもったいないと思います。自賠責は全員が払っているのに、いちばん説明されない保険です。この機会に仕組みだけ知っておいてもらえたらと思います。

私も最初は「早めに通せば旧料金だな」と思っていたんだ。ところが実際に自賠責を切ってみると、始まる日が動かない。書類にしてはじめて気づいたよ。基準は手続きした日でも受検日でもなく、保険が始まる日。ここだけ覚えて帰ってほしいな。
- 基準は手続きした日でも受検日でもなく、保険が始まる日だと知った
- 継続の車検では、前倒ししても自賠責の始まる日は動かないと分かった
- 車検証を出して「有効期間の満了する日」を確かめた
- 満了日が2026年9月末までなら、いつもどおり受ければ旧料金だと確認した
- 10月以降が満了日なら、値上げは避けられないと納得した
- 新車の納車待ちなら、登録を10月中にできるか販売店に聞いた
- 軽自動車の方は、維持費の計算を9,330円に直した
- 下げられるのは自賠責ではなく、任意保険のほうだと理解した
車検証は、たいていダッシュボードの中にあります。満了日が9月中なら、いつもどおり受けるだけで旧料金です。10月以降なら、慌てて予定を動かす必要はありません。それが分かるだけでも、見る価値はあります。

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