11月に入ると、店で灯油のご相談が増えます。「セルフで灯油って、自分で入れるんですか」という質問から始まる方がほとんどです。
やること自体は難しくありません。給油と同じで、機械の案内どおりに進めれば3分ほどで終わります。灯油の値段も、ガソリンほど毎週動くわけではありません。
それでも、毎年決まって同じところでつまずく方がいます。操作が分からずに画面の前で止まる方と、持ってきた容器が使えずに出直しになる方です。つまずきの多くは、給油機の前に立つ前に決まっています。灯油を入れる順番と、店で実際によく見る失敗を、危険物取扱者の立場から順に並べました。読み終えたときには、初めてでも迷わず入れられるはずです。
- セルフで灯油を入れる順番
- 灯油だけ計量器が別の理由
- 店員に頼めることと頼めないこと
- 灯油缶にガソリンが違法な理由
- 去年の灯油の引き取り

灯油ってセルフやと自分で入れなあかんの? わし背ぇ届くかな。

高さは心配いらないよ。ただ順番を知らないと、機械の前で固まってしまう人は多いね。
セルフ灯油の前の準備

灯油を買いに行く前に、確かめてほしいものが1つだけあります。ポリタンクです。店でお断りすることになる原因は、ほとんどがポリタンク側にあります。灯油用ではない容器を持ってこられる方も、蓋が割れたまま何年も使っている方も、毎年いらっしゃいました。容器さえ問題なければ、あとは機械の案内どおりで終わります。まずは準備から見ていきます。
灯油用ポリタンクの見分け方
灯油用のポリタンクは、赤や青の色付きです。中身が見える半透明の容器や、水用のタンクは灯油には使えません。
色が付いているのは、飾りではありません。日本ガス石油機器工業会は、紫外線を通しにくい色付きの灯油用ポリタンクを使うよう案内しています。灯油は日光で変質するので、光を通しにくい色にしてあります。
- 赤や青の色付き
- 灯油用と書かれている
- ひび割れや変形がない
割れやすい蓋とキャップ
店でいちばん多いのが、蓋の破損です。プラスチックなので、何年も使っていると縁が欠けたり、ねじ山が割れたりします。
蓋が閉まらない容器に灯油を入れると、運ぶ途中でこぼれます。車の中でこぼせば、においはしばらく取れません。蓋が割れているポリタンクは、買い替えが一番安上がりです。ホームセンターで千円前後です。

うちのタンク、蓋のギザギザんとこ欠けてんねんけど、まだいけるやろ?

それは替えどきだね。灯油がこぼれると、車内のにおいは数か月残るよ。
1リットルからの購入
「18リットルの缶がないと買えませんか」と聞かれることがあります。そんなことはありません。
セルフの計量器は、給油と同じように金額でも数量でも指定できます。1リットルでも2リットルでも買えます。石油ストーブを1台だけ使う方や、試しに少しだけほしい方も、遠慮なくどうぞ。
セルフで灯油を入れる手順

ここからが本題です。順番は4つだけで、給油とほとんど同じです。灯油は、ガソリンとは別の計量器に分かれています。同じ機械で油種を選ぶわけではないので、まず灯油の計量器を探すところから始まります。機種によって画面の出方は違いますが、流れはどの店でも共通です。うちの店の手順に沿って、押す順番どおりに説明します。慣れてしまえば、缶を車から降ろす時間のほうが長いくらいです。
灯油だけ計量器が別
ガソリンの計量器には、レギュラー・ハイオク・軽油のノズルが並んでいます。灯油はそこにありません。
理由は、油種の入れ間違いを防ぐためです。軽油とガソリンの入れ間違いと同じで、油種の事故は機械の作りで防ぐのがいちばん確実になります。灯油だけ独立した計量器にしてあるので、灯油を選ぶ操作そのものがありません。まず店内で灯油の計量器を探してください。だいたい建物の脇や、ピットの近くにあります。給油機そのものの操作に不安がある方は、セルフスタンドの使い方と給油のやり方も合わせてどうぞ。
- ガソリンとは別の機械
- 油種を選ぶ操作がない
- 建物の脇にあることが多い
支払い方法と数量の選択
計量器の前に立ったら、最初にするのは支払い方法の選択です。現金かカードか、画面のボタンで選びます。なおタッチ決済が使える店と使えない店があるので、カード払いの方は先に確かめておくと安心です。
次に数量か金額を指定します。ポリタンクの容量より少なめに指定するのが、こぼさないコツです。18リットルの缶なら、満タンにせず15リットルほどに抑えておくと、運ぶときに余裕が生まれるでしょう。
ノズルを取ってから給油
支払いと数量を決めたら、ノズルを取り、ポリタンクの口に差し込みます。差し込みが浅いと、はねた灯油が手にかかります。
あとはレバーを握るだけです。指定した量で自動的に止まります。入れ終わったら、その場で蓋を必ず閉めてください。閉め忘れたまま車に積んで、カーブでこぼす方が毎年います。
- 支払い方法を選ぶ
- 数量か金額を指定
- ノズルを差し込む
- レバーを握る
- 蓋を閉める
店でよく見るつまずき

手順どおりに進めば難しくないのですが、それでも毎年同じ場面で止まる方がいます。多いのは操作が分からない場合と、容器が使えない場合の2つです。どちらも、その場でどうすればいいかを知っておけば慌てずに済みます。店員から見て実際に多い順に紹介します。恥ずかしい話ではなく、初めての方には誰にでもあることです。先に知っておけば、行列のうしろに人がいても落ち着いて進められます。
操作が分からないとき
初めての方は、画面の前で手が止まりがちです。周りに人がいると、余計に焦ってしまうものでしょう。
そのときは、遠慮なく店員を呼んでください。セルフの店員は、操作を教えるために立っています。インターホンでも、手を挙げて合図でもかまいません。
割れた蓋のまま来る人
蓋が割れた容器を持ってこられる方も多いです。本人は気づいていないことがほとんどです。
この場合、店としては入れてお渡しするわけにいきません。運ぶ途中でこぼれる容器に、灯油は入れられません。新しいポリタンクを買ってから、出直していただくことになります。

蓋割れてたら、おっちゃん怒るん?

怒らないよ。ただこぼれると危ないから、そのままでは入れられないんだ。
店員ができること
「代わりに入れてもらえませんか」と頼まれることもあります。ここは誤解されやすいところです。
セルフの店では、店員が給油そのものを代わりに行うことはできません。店員がするのは、操作の説明までです。実際にレバーを握るのはお客様自身になります。体調が優れないときは、フルサービスの店を選ぶほうが安心です。
灯油缶にガソリンは違法

ここからは、店員が強く止める話です。灯油用のポリタンクにガソリンを入れようとする方が、年に何人かおられました。灯油用ポリタンクにガソリンを入れて運ぶことは、法律で禁止されています。総務省消防庁が資料で明確に示しました。知らずにやってしまう方が多いので、理由まで掘り下げます。危険物取扱者として、ここだけは譲れません。
法律で禁止される理由
ガソリンと灯油は、同じ石油製品でも危険性がまったく違います。
消防庁の資料によると、ガソリンは灯油よりも引火点が低く、火災の危険性が高い液体です。さらにガソリン自体に静電気がたまりやすい性質があります。灯油用ポリタンクは電気を通さないため、たまった静電気の逃げ場がありません。火花が散れば、その場で引火します。
- 灯油用の赤や青のポリタンク
- 飲料用の容器
- 灯油用の給油ポンプ
セルフでの小分け禁止
もうひとつ、セルフの店ならではの決まりがありました。
消防庁は、セルフスタンドなどで、お客様が自らガソリンを携行缶に小分けすることは禁じられていると示しています。草刈り機や発電機用にガソリンがほしい場合は、店員が金属製の携行缶へ入れる形になりました。身分の確認と使用目的の記録も必要です。
店員が止める場面
実際の店では、灯油の計量器の前でこの話になることがあります。
ポリタンクを持った方がガソリンの計量器に向かおうとしたら、必ず声をかけるようにしています。注意されたら、嫌がらせではなく法律の話だとご理解いただけると助かるところです。金属製の携行缶を持ってきていただければ、店員のほうで対応いたします。
灯油を車で運ぶとき

買ったあとの運び方にも、押さえどころがありました。灯油は、こぼれなければ危険なものではありません。逆に言えば、こぼさない工夫がすべてです。消防庁も、運搬と保管には日頃から十分な注意を心がけることが大切だと呼びかけています。車内でこぼしたときの後始末は本当に大変なので、ここは丁寧にいきましょう。積み方と、積んだままの給油について順に見ていきます。
蓋の閉め方と積み方
基本は2つです。蓋をしっかり閉めることと、倒れないように積むことです。
消防庁も、蓋を確実に閉め、落下や転倒をしないよう注意するよう示しています。ラゲッジの壁際に寄せ、動かないよう荷物で挟むのが確実です。助手席の足元も、急ブレーキで倒れにくい場所になります。
積んだままの給油
「灯油を積んだままガソリンを入れてもいいですか」と聞かれることがあります。
結論から言えば、問題ありません。蓋が閉まっていれば、積んだまま給油して大丈夫です。店でも日常的に見かける光景です。ただし、灯油をこぼした状態のままでの給油は避けてください。
こぼれ対策のトレー
ポリタンクの下に敷くトレーを使う方が、最近は増えました。
少しにじんだ程度なら、トレーが受け止めてくれます。車内に灯油のにおいが移るのを防ぐには、これがいちばん手軽です。店では扱っていないので、ホームセンターや通販が入手先になります。

トレー敷いとったら、ちょっとくらいこぼれても平気なんや。

そう。においが車に移ると、消すのに数か月かかるからね。
灯油の保管と買う時期

最後は、買ったあとの話です。灯油には使い切る目安があります。石油連盟は、灯油の使用推奨期間を6か月としています。シーズンをまたいだ灯油は、見た目が普通でも使わないほうが安全です。保管の場所と、残った灯油の始末、買いに行く時期についても、店から見た実情をお伝えします。ここを押さえておくと、来年の春に困りません。
保管場所の条件
保管でいちばん大事なのは、日光と高温を避けることです。
日本ガス石油機器工業会は、火気・雨水・ごみ・高温・日光を避けた場所での保管を案内しています。日の当たるベランダに置いたままにするのが、いちばんよくない保管です。屋内の北側や、日の差さない物置が向いています。
- 日の当たるベランダ
- 暖房器具のそば
- 雨がかかる屋外
去年の灯油の扱い
春に残った灯油を、翌シーズンまで取っておく方がいます。ここは注意が必要です。
日本ガス石油機器工業会によると、変質した灯油を使うと、火がつきにくくなる、においがきつく目にしみる、消火できなくなるといった事象が起きます。うちの店では、古い灯油を1缶550円で引き取っています。捨て方に困ったら、まず買った店に相談してください。
混み始める12月
買いに行く時期の話です。地域によりますが、私の店では12月から一気に増えます。
寒波の予報が出ると、その日の夕方には行列ができるほどです。11月のうちに1缶買っておくと、寒くなってから慌てずに済みます。ストーブを出す前に、去年の灯油の処分も一緒に済ませておくと楽です。冬の朝の備えは車のドアが凍って開かないときの対処にもまとめました。
よくある質問
Q1. 灯油は1リットルから買えますか?
買えます。セルフの計量器は数量でも金額でも指定できるので、少量でも問題ありません。ポリタンクは灯油用のものが必要になります。
Q2. ポンプがなくても入れられますか?
入れられます。店の計量器にはノズルが付いているので、家庭用の手動ポンプは必要ありません。ストーブに移すときには使います。
Q3. 灯油を積んだまま給油してもいいですか?
問題ありません。蓋がしっかり閉まっているかどうかだけ確かめておきます。こぼした状態のままでの給油は避けたいところです。
Q4. 去年の灯油はもう使えませんか?
使わないほうが安全です。石油連盟は使用推奨期間を6か月としています。処分に困ったら、買った店への相談が近道です。
Q5. 店員に入れてもらえますか?
セルフの店では、店員が代わりに給油することはできません。操作の説明はしますので、分からないときは呼んでください。
Q6. 灯油用ポリタンクにガソリンを入れてはいけませんか?
法律で禁止されています。ガソリンは静電気がたまりやすく、電気を通さない灯油用ポリタンクでは逃げ場がありません。金属製の携行缶を使ってください。
まとめ
セルフの灯油は、順番さえ知っていれば3分で終わります。支払い方法を選び、数量を指定し、ノズルを差してレバーを握るだけです。灯油だけ計量器が別になっているので、まずその機械を探してください。
つまずきの多くは、機械ではなくポリタンク側にあります。出かける前に蓋を確かめておけば、ほとんど防げます。分からないときは、遠慮なく店員を呼んでください。
- 灯油は単独の計量器
- 支払い方法から選ぶ
- 少量でも購入できる
- 蓋の割れは事前に確認
- 去年の灯油は使わない
今シーズンの準備は、ポリタンクの点検から始まります。蓋とキャップを見て、割れているようなら買い替えておきましょう。11月のうちに1缶用意しておくと、寒波の日に慌てずに済みます。

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