スタッドレスに履き替えたあと、「100km走ったら増し締めを」と言われたものの、そのままになっていませんか。近くのガソリンスタンドで頼めるのか、お金はかかるのか、そもそも本当に必要なのか。はっきりしないまま、気づけば冬が終わっていたという人もいるはずです。
私はガソリンスタンドの店長として、毎年たくさんの車のタイヤを付け替えてきました。交換したお客様には増し締めに来てもらうよう伝えていますが、実際に戻ってくる人は多くありません。
タイヤを付ける側の店長として、増し締めをいつ、どこで頼めばいいのかと、自分で交換する人が気をつける点を、店の目線でお話しします。
- 増し締めを言われたけど行っていない
- ガソリンスタンドで頼めるか不安
- 無料か有料か分からない
- 自分で交換したタイヤが心配

増し締めって、ほんまに行かなあかんの?ちゃんと締めてもろたはずやで。

プロが正しく締めていれば、まず緩まないよ。それでも一度は確かめてほしい理由があるんだ。
増し締めが必要な理由

増し締めとは、タイヤを付けてしばらく走ったあとに、ホイールナットの締まり具合をもう一度確かめて締め直すことです。業界団体の日本自動車タイヤ協会(JATMA)は、タイヤを付けたら走り始めの段階で増し締めをするよう定めています。締め方が足りなくても、締めすぎても、ナットは緩む原因になるからです。プロが締めたタイヤでも、確認だけはしておく価値があります。なぜ走ると締まり具合が変わるのか、順番に見ていきます。
走るとナットの座面がなじむ
ホイールナットは、ホイールの穴の面にぴったり押し付けることで固定されています。付けたばかりのときは、この面同士がまだ完全にはなじんでいません。
走ると車の重さや振動がかかり、ナットとホイールの当たる面が少しずつなじんでいきます。なじんだ分だけ、締めたときの力がわずかに弱まることがあります。増し締めは、このわずかな変化を走り始めのうちに確かめるための作業です。
締め不足も締めすぎも危険
JATMAの整備基準には、締める力が足りないとナットの緩みやボルトが折れる原因になり、締めすぎるとネジ山やホイールが傷んで緩みが出るおそれがある、と書かれています(自動車用タイヤの選定、使用、整備基準 2023 乗用車用タイヤ編)。
つまり、強く締めれば安心というわけではありません。車ごとに決められた強さ(規定トルク)で締めることが、いちばん緩みにくい締め方です。規定トルクは、車の取扱説明書に書いてあります。
- 締め不足:緩み・ボルト折れの原因
- 締めすぎ:ネジ山やホイールが傷む
- 正解:車ごとの規定トルクで締める
プロが締めても確認はしたい
私の店では、インパクトレンチで仮に締めたあと、トルクレンチで規定の強さまで本締めしています。この締め方なら、ナットが緩んでいることは基本的にありません。
それでも増し締めをすすめるのは、タイヤが外れたときの危険が大きすぎるからです。手間は数分でも、確かめておけば走行中の不安がなくなります。とくに冬は、雪道や凍った道を走る前に確認しておくと安心です。
増し締めの時期は100km

増し締めに行くタイミングは、走った距離で考えるのが分かりやすいです。JATMAの整備基準では、タイヤを付けたあと走行初期の100km程度で増し締めをするよう定めています。一方で、毎日そんなに走らない人は、100kmに届くまで時間がかかります。私の店では距離と日数の両方で目安を伝えていますが、実際には来ないまま忘れてしまう人も少なくありません。ここでは、いつ行けばいいのかを具体的にまとめます。
目安は交換後100km程度
100kmは、なじみによる変化が落ち着くまでの目安です。毎日の通勤や買い物で使う車なら、それほど日数はかからないはずです。
メーターの走行距離を、交換した日にスマホで撮っておくと便利です。交換した日の距離に100を足した数字を覚えておけば、行くタイミングを逃しません。トリップメーターを0に戻しておくのも手です。
店では1〜2週間と伝える
私の店では、交換したお客様に「1〜2週間したら見せに来てください」とお伝えしています。距離だけだと、あまり乗らない人はいつまでも100kmに届かないからです。
100km走るか1〜2週間たつか、どちらか早いほうで一度見てもらえば十分です。雪の予報が出る前に済ませておけば、冬のあいだ安心して走れます。
戻ってくる人は少数
正直なところ、増し締めに戻ってくるお客様は多くありません。交換したときに伝えても、1〜2週間たつと忘れてしまうのも無理はありません。
忘れないためには、交換したその場でスマホのカレンダーに入れておくのがいちばんです。「増し締め」と2週間後の日付を入れておくだけで、行き忘れはほぼ防げます。給油のついでに寄れる店なら、なおさら気軽に頼めます。

言われたときは覚えとるんやけど、2週間もたったら忘れてまうねん。

だから交換したその日に、カレンダーに入れてしまうのがいちばん確実なんだ。
ガソリンスタンドの増し締め事情

増し締めは、ガソリンスタンドでも頼めます。ただ、どこで交換したかによって、頼み方や料金の扱いが変わります。基本は、タイヤを交換した店に戻って見てもらうのがいちばんスムーズです。よその店で交換したタイヤや、自分で付け替えたタイヤの場合は、先に電話で聞いておくと安心です。ここでは、スタンドで増し締めを頼むときに知っておきたいことを、受ける側の店長としてまとめます。
交換した店に戻るのが基本
タイヤを交換した店なら、どのくらいの強さで締めたかを店が分かっています。増し締めも、交換した作業の続きとして見てもらえます。
交換した店では、増し締めを作業の一部として扱っていることもあります。交換したときに「増し締めはいつ、いくらか」を聞いておくと、あとで迷いません。レシートや作業の控えに、交換した日と距離が書いてあれば取っておくと話が早く進みます。
よそで替えたタイヤは有料も
よその店で交換したタイヤや、自分で付け替えたタイヤの増し締めを受けるかどうかは、店によって違います。私の店では、有料でお受けしています。
よそで締めたナットは、どの強さで締めたのかが店には分からないためです。料金は店ごとに違うので、行く前に電話で「増し締めだけお願いできますか」と聞くのが確実です。タイヤ交換をしていないスタンドでは、増し締めも受けていないことがあります。
電話で聞いてから行く
増し締めは数分で終わる作業ですが、タイヤ交換の予約で作業場が埋まっている日もあります。とくに雪の予報が出た直後は、履き替えの車で混み合います。
電話では「どこで交換したか」と「車種」を伝えれば、受けられるかと料金がすぐ分かります。空いている時間を教えてもらえることもあるので、待ち時間も短くて済みます。
- 増し締めだけお願いしたい
- 交換した店(自分で交換も)
- 車種とホイールの種類
- 来店したい日時
緩む原因はナット選び

規定トルクで正しく締めたナットが、走っているうちに大きく緩むことは、まずありません。私の経験では、緩んでいる車の多くは、ホイールに合っていないナットを使っているケースです。社外のアルミホイールに替えたときや、中古のホイールを買ったときに起きやすい失敗です。増し締めをしても、ナットが合っていなければ根本の解決にはなりません。ナットの形の違いと、付けるときの向きについて説明します。
ナットの座面は3種類
ホイールナットがホイールに当たる面(座面)の形には、テーパー、球面、平面の3種類があります。車のメーカーやホイールによって、使う形が決まっています。
JATMAの整備基準にも、ホイールを交換するときはホイールに合ったナットを使うよう書かれています。形が合わないナットは、面で当たらず点で当たるため、締めても固定が不安定になります。見た目がよく似ているため、並べてみないと違いに気づきにくいのが厄介なところです。
| 座面の形 | 見た目 | よく使われる場面 |
|---|---|---|
| テーパー | 円すい形にとがっている | 社外アルミホイールに多い |
| 球面 | 丸くふくらんでいる | 一部メーカーの純正ホイール |
| 平面 | 平らでワッシャー付き | 一部メーカーの純正アルミ |
ホイールを替えたら要注意
純正ホイールから社外ホイールに替えると、それまでのナットが使えないことがよくあります。スタッドレスを中古のホイール付きで買ったときも同じです。
ホイールを替えるときは、ホイールに合うナットも一緒にそろえるのが安全です。ホイールを買った店や通販の窓口に、車種とホイールを伝えれば、合うナットを教えてもらえます。持ち込みでタイヤを付けるときの注意は、持ち込みタイヤ交換の落とし穴でも詳しく書いています。
テーパー面はホイール側
テーパーナットは、とがった円すいの面をホイール側に向けて付けます。向きを逆にすると、ホイールの穴に正しく収まりません。
自分で交換するとき、慌てていると逆向きに付けてしまう人がいます。とがった側がホイールの穴に入る向きになっているか、締める前に1本ずつ確かめます。逆のまま締めれば、ナットもホイールも傷むだけです。
増し締めしないと起きること

増し締めをしなかったからといって、すぐにタイヤが外れるわけではありません。それでも、締め方に問題があったまま走り続けると、取り返しのつかない事故につながることがあります。車検のあとにタイヤが外れたという話を、私も聞いたことがあります。タイヤを外す作業のあとは、どこでやったかに関係なく同じ注意が必要だということです。緩みのサインと、気づいたときの対処をまとめます。
車検のあとに外れた話
車検や点検でも、タイヤを外してブレーキなどを確認します。作業のあとにナットを締めるのは、タイヤ交換と同じです。
聞いた話では、車検のあとしばらくして、走行中にタイヤが外れたそうです。タイヤを外す作業のあとは、車検でも交換でもローテーションでも、増し締めの考え方は変わりません。作業のあとに違和感があれば、すぐにその店に連絡してください。
ボルトが折れる危険
ナットが緩んだまま走ると、ホイールががたついて、ナットを留めているボルトに無理な力がかかります。その結果、ボルトが折れることがあります。
反対に、締めすぎでもネジ山やホイールが傷み、緩みの原因になります。緩めでも締めすぎでも、最後にはボルトやホイールを傷めるのが怖いところです。ボルトやホイールの交換になると、修理代も時間も余計にかかります。
走行中の異音はすぐ止まる
走っているときに、タイヤのあたりからゴトゴト、カタカタという音がする。ハンドルがぶれる。そんなときは、ナットが緩んでいるおそれがあります。
いつもと違う音や振動を感じたら、安全な場所にすぐ止めて、無理に走り続けないことが大切です。そのまま近くの店に行くのが不安なら、ロードサービスを呼ぶのが確実です。
- タイヤ付近のゴトゴト音
- ハンドルのぶれ・振動
- ナットのまわりのさび汁
- ナットの頭の高さがそろわない
自分でタイヤ交換する人の注意点

スタッドレスへの履き替えを、自分でする人もいるでしょう。自分で交換するなら、増し締めよりも前に、ジャッキアップと締め方で失敗しないことがいちばん大切です。自分で交換するときに怖いのは、ジャッキの外れと締め方のミスです。私が店で見てきたことと、JATMAやJAFの手順をもとに、自分で交換する人に守ってほしい点をまとめます。道具選びの目安も最後に添えました。
平らで硬い場所と馬で安全に
ジャッキアップは、必ず平らで、地面の硬い場所で行います。アスファルトやコンクリートの上が基本で、砂利や土の上は避けます。
車を上げたら、リジッドラック(通称「馬」)をかけて、ジャッキだけで車を支えないようにします。ジャッキは車を持ち上げる道具で、支え続けるための道具ではないからです。車の下に体を入れるのは、馬をかけてからにします。
緩めてから上げ手で入れる
ナットは、ジャッキアップする前に軽く緩めておきます。JAFやJATMAの手順でも、タイヤが地面に着いているうちに少し(約1回転)緩めてから上げる順番です(JAF クルマ何でも質問箱)。
付けるときは、ナットをいきなりレンチで回さず、まず手で回して入れます。手で入れれば、ネジ山が斜めに噛んでいないかが指先で分かるからです。そのあと対角の順に少しずつ締め、タイヤを地面に下ろしてから2、3回に分けて本締めします。
- 平らで硬い場所で作業する
- 上げる前にナットを軽く緩める
- 上げたら馬をかける
- ナットは手で回して入れる
- 対角の順に2、3回で締める
踏まずに締めトルクレンチも
レンチに足をかけて、体重で締める人がいます。これは締まりすぎの原因になり、JAFも無理に締め付けるとボルトが破損する場合があると注意しています。
スタッドレスへの履き替えを毎年自分でするなら、十字レンチや柄の長いホイールレンチがあると、回すのがぐっと楽です。毎回自分で付け替える人は、規定トルクで締められるトルクレンチを買う価値があります。締めたあとは、100km程度走ったところでもう一度トルクレンチで確かめれば、増し締めまで自分で済ませられます。

足で踏んだほうが、しっかり締まってええと思っとったわ。

それが締めすぎのもとなんだ。強さは力まかせじゃなくて、トルクレンチで決めるのが正解だよ。
よくある質問
Q1. 「増し締めは不要」は本当ですか?
規定トルクで正しく締めていれば、大きく緩むことはまずありません。一方で、JATMAの整備基準は走行初期の増し締めを定めています。安心のために、一度は確かめてもらうのがおすすめです。
Q2. 増し締めは何km走ったら行けばいいですか?
目安はタイヤを付けてから100km程度です。あまり乗らない人は、100kmか1〜2週間のどちらか早いほうで見てもらえば十分です。
Q3. ガソリンスタンドの増し締めは無料ですか?
店や、どこで交換したかによって違います。交換した店なら作業の一部として扱う店もあり、よそで交換したタイヤは有料の店もあります。行く前に電話で確かめてください。
Q4. トルクレンチがないときはどうすればいいですか?
車に積んである工具で締めた場合は、なるべく早くお店でトルクレンチを使って締め直してもらってください。力まかせに締めると締めすぎになるので注意が必要です。
Q5. 車検やタイヤのローテーションのあとも増し締めは必要ですか?
タイヤを外して付け直す作業のあとは、考え方は同じです。作業のあとに異音や振動があれば、すぐに作業した店に連絡してください。
まとめ
タイヤを付けたあとの増し締めは、走行初期の100km程度が目安です。プロが正しく締めていれば緩むことはまずありませんが、交換した店に100kmか1〜2週間で一度見てもらうのが、いちばん安心な方法です。
緩む原因の多くは、ホイールに合わないナットと、締めすぎや締め不足です。自分で交換する人は、平らで硬い場所と馬、手で入れて対角に締める手順を守ってください。
- 増し締めの目安は100km程度
- 100kmか2週間の早いほうで
- 交換した店に戻るのが基本
- 緩む原因はナットの選び間違い
- 自分で締めるならトルクレンチ
まずは、交換した日と距離をスマホに残して、2週間後の予定に「増し締め」と入れておいてください。これからスタッドレスを買うか迷っている人は、スタッドレスタイヤは必要かも参考になります。タイヤの買い替え時期は、タイヤの選び方と交換時期で詳しく書いています。

コメント