「カードを作ると、リッターあたり安くなりますよ」
スタンドでそう伝えたときに返ってくる言葉は、だいたい3つに決まっています。「面倒くさい」「時間がない」「よくわからない」。断られる理由の9割はこのどれかです。損をしたい人はひとりもいないのに、手続きの前で止まってしまう。
気持ちはわかります。ガソリンカードの説明は、どこの会社のページを開いても専門用語だらけです。しかも各社が「うちが一番安い」と書いている。比べようがありません。
そこで、大手3系列(ENEOS・出光/apollostation・コスモ)を並べて、「安くなる仕組み」がどう違うのかを整理しました。結果から言うと、3社は同じ土俵に乗っていません。値引きの考え方そのものが別物です。

結局どれが一番安いん? 一番安いやつ教えてくれたらそれ作るわ。

そこなんだよ。その質問には答えられない。人によって答えが変わるから。理由を順番に話すね。
ガソリンカードを選ぶ=通う店を決める、ということ
比較に入る前に、ここを外すとあとが全部ずれます。
系列のガソリンカードは、その系列の店でしか値引きが効きません。ENEOSカードを出光で出しても、リッターの値引きはつきません。クレジットカードとしては使えるので支払いは通ります。でも安くはならない。
これは店で本当によく聞かれます。「他社のカードって、使えますか?」と。使えます、と答えると安心されるのですが、聞きたかったのは「安くなりますか」だったはずです。ここが噛み合わないまま帰られることがあります。
系列カードは、他系列の店でも支払いには使えます。ただ、リッターあたりの値引きや会員価格が付くのは自分の系列の店だけです。
つまりカードを1枚選ぶことは、これから通う店を決めることとほぼ同じ意味になります。
店に立っていると、お客様の来方は2つに分かれます。ほとんどの方は、決めた店にずっと来られます。通勤路にあるとか、家から近いとか、理由は生活動線です。一方で、その日の看板の値段を見て動く方もいます。
前者なら、カードは迷わずその店の系列で作るのが正解です。後者の場合、系列カードの旨みは薄くなります。どこでも効く一般のクレジットカードのほうが素直です。
どちらのタイプかを先に決める。それだけで、選択肢は3分の1に減ります。
3系列は「安くなる仕組み」がまるで違う
ここが今回いちばん伝えたい部分です。3社は値引き額が違うのではなく、値引きの決まり方が違います。

ENEOS=固定値引き型(誰でも同じ)
ENEOSカードSは、ガソリンと軽油がずっと2円/L引き。使う人の属性や利用額に関係なく、常に同じです。年会費は1,375円ですが、初年度は無料で、年に1回でもカードを使えば翌年度も無料になります。給油に使っていれば実質かかりません。
これにENEOS公式アプリ(モバイルEneKey)のクーポンが乗ります。配信内容は時期によりますが、給油だけでなく洗車やオイル交換の割引も来ます。
この方式のいいところは、読めることです。今月いくら使ったかを気にする必要がない。誰が持っても2円/L。ここを起点に、アプリのクーポンで上積みしていく形になります。
出光(apollostation)=利用額連動型(生活費を寄せる人ほど安い)
apollostation cardは、年会費が永久無料。基本の値引きはENEOSと同じ2円/L引き(灯油は1円)です。ここまでなら横並びに見えます。
違うのは「ねびきプラスサービス」のほうです。年会費550円(初年度無料)で登録しておくと、そのカードのショッピング利用が月3万円を超えたところから、1万円ごとに値引きが1円/Lずつ上がっていきます。上限は最大10円/L引き。
つまり、食費も光熱費も日用品もこのカードで払っている人ほど、給油が安くなる設計です。カードを「給油用の1枚」として持つ人には向きません。逆に、生活費をまとめて1枚に寄せているなら、3社の中でいちばん深く下がる可能性があります。
広告で目に入るのはこの数字ですが、そこに至るには毎月かなりの金額をこのカードに通す必要があります。月3万円は入口で、そこからさらに1万円ごとに1円ずつ。
そして値引き単価が反映されるのは、使った月の翌々月の給油分です。今月がんばっても、効いてくるのは2か月あと。ここを知らずに登録すると「増えていない」と感じます。
もうひとつ、出光興産のアプリ「Drive On」のクーポンが別枠であります。カード側の値引きとは別の話なので、両方使えます。
コスモ=会員価格型(値引き額が固定されていない)
コスモだけ、考え方が違います。「◯円引き」ではなく「会員価格になる」という仕組みです。コスモ・ザ・カード・オーパス(年会費永年無料)で払うと、看板の価格ではなく会員向けの価格が適用されます。
ここが重要なのですが、会員価格が何円安いかは店舗ごとに違います。全国一律の数字はありません。だからこの記事でも「コスモは◯円引き」と書くことができない。近所のコスモで実際にいくらになるかは、そこで確かめるしかありません。
そしてコスモは、公式アプリ「コスモSS Pay」が本体です。アプリにコスモ・ザ・カードを登録しておくと、給油機でQRコードをかざす一回で、会員証・クーポン・決済の3つが同時に片づきます。カードを財布から出す必要も、クーポンを別に出す必要もありません。
新規入会で最大300Lまで10円/Lキャッシュバック。さらにコスモSS Payに登録すると追加で100L分が対象になり、合計で最大400L=4,000円相当まで戻ります。
ただし、これは一度きりの特典です。長く乗る前提で選ぶなら、日常の値引きの仕組みで比べたほうが確実です。
| ENEOS | 出光(apollostation) | コスモ | |
|---|---|---|---|
| 仕組み | 固定値引き | 利用額連動 | 会員価格 |
| 基本の値引き | 2円/L | 2円/L | 店舗ごとに違う |
| 上乗せの条件 | アプリのクーポン | 月3万円超の利用 (最大10円/L) | アプリのクーポン |
| カード年会費 | 1,375円 年1回の利用で無料 | 永久無料 | 永年無料 |
| Apple Pay | QUICPay | QUICPay | iD |
| 公式アプリ | モバイルEneKey | Drive On | コスモSS Pay |
| 向いている人 | 計算せず 確実に下げたい | 生活費を 1枚に寄せている | 近所がコスモ アプリ決済でいい |

基本の値引きはENEOSも出光も同じ2円なんやな。差がつくのは、そのあとってことか?

そう。差がつくのは「そのカードで生活費まで払うかどうか」。給油専用の1枚にするなら、3社ともほぼ横並びだよ。
手間が少ない順に並べると、こうなる
冒頭に書いた「面倒くさい」「時間がない」に、ここで正面から答えます。
給油の支払い方は、店から見ていると手間の差がはっきり出ます。速い人はとにかく速い。財布に触らずに終わります。
| 順 | 払い方 | 給油機での動作 | 最初にやること |
|---|---|---|---|
| 1位 | 公式アプリのコード決済 (モバイルEneKey/コスモSS Pay) | スマホをかざす 1回だけ | アプリを入れてカードを登録 |
| 2位 | カードをApple Payに登録 | iPhoneをかざす | ウォレットに登録 |
| 3位 | カードを財布から出す | 差し込む・抜く クーポンは別操作 | なし |

1位が抜けている理由は、会員証とクーポンと決済が1回で終わるからです。カード払いだと、クーポンを使うのに別の操作が要ることがあります。アプリのコード決済は、そこがまとまっている。
アプリを入れてカードを登録する作業は、ソファに座ったまま5分で終わります。そしてそれ以降、給油のたびにやることは減ります。
断られるときの「面倒くさい」は、たいていこの5分と、これから何百回の給油とを、同じ重さで見ている状態です。順番が逆になっています。
Apple Payについては、3社とも対応しています。ENEOSカードと出光のカードはQUICPayとして、コスモのオーパスはiDとして登録されます。レジで「Apple Payで」と言うと通じないことがあるのは、店員の端末に出るのがこの名前だからです。詳しくはガソリンスタンドでApple Payは使える?にまとめています。
カードを作りたくない人は、アプリだけでも下がります
ここまで読んで、それでも「カードは作りたくない」と感じた方へ。その選択のままでも、下げる方法は残っています。
見落とされがちなのですが、公式アプリには2つの機能が入っています。ひとつは決済、もうひとつはクーポン。この2つは別物です。決済を使うにはカードなどの登録が要りますが、クーポンを受け取るだけなら、アプリを入れて近くの店を登録しておくだけで届きます。
| 系列 | アプリ名 | クーポンを受け取るのに必要なこと |
|---|---|---|
| ENEOS | ENEOS公式アプリ | アプリを入れて店をフォローする |
| 出光 | Drive On | アプリを入れる |
| コスモ | コスモの公式アプリ | アプリを入れる |
クーポンの中身は給油だけではありません。洗車やオイル交換の割引も回ってきます。給油以外で店に寄る用があるなら、こちらのほうが金額としては大きいこともあります。
ENEOSは公式サイトに「これらを配信していないサービスステーションもございます」と明記しています。配信するかどうかは店ごとの判断です。
アプリを入れてしばらく何も来ない場合、あなたが登録した店が配信していないだけ、という可能性があります。近くにもう1店あるなら、そちらも登録しておくと届く確率は上がります。
ポイントの連携も、アプリ側の設定です。ENEOSのアプリなら、Vポイント・楽天ポイント・dポイントのどれかを紐づけられます。ここまでは、審査も郵送も待ち時間もありません。(※あとでクレジットカードを登録する場合、カードによってはポイント連携ができなくなります。詳しくは後述します)
私自身が、実際にどう払っているか
毎日いろんな払い方を見ている人間が、自分では何を使っているのか。ここは正直に書きます。
ENEOSの公式アプリで、モバイルEneKeyを使っています。理由は2つだけです。いちばん安く入れられて、いちばん手間が少ないから。
カードの2円引きが常に効いて、そこにアプリのクーポンが乗る。給油機ではスマホをかざすだけで、ポイントも一緒に付きます。財布を出す場面がありません。
ただ、これを「あなたも同じにすべきです」とは言いません。私がこの系列を選んでいるのは、私の生活動線にその店があるからです。近所が出光の方なら出光のカード、コスモの方ならコスモのカード。そこを無視して系列だけ真似ても、値引きは付きません。

なんや、結局「近所の店で決めろ」ってことやん。身も蓋もないなあ。

身も蓋もないけど、これがいちばん効くんだよ。2円のために遠回りしたら、ガソリン代で消えるからね。
これは冗談ではありません。2円/L引きは、50L入れて100円です。片道5分よけいに走れば、その100円は消えます。安い店を探して遠くまで行く話も同じで、価格差と距離は必ずセットで考える必要があります。看板の値段がなぜ店ごとに違うのかはガソリン価格はなぜ店で違う?で書きました。
近所がコスモの方へ:いま作るなら特典が大きい
コスモは会員価格の額を公表していないぶん、比較記事では損をしがちです。ただ、入会時の戻りだけを見ると、いまは3社で頭ひとつ抜けています。
年会費は永年無料。イオングループでの買い物でもポイントが付くので、給油以外でも使い道があります。作るならコスモSS Payへの登録までを1回で済ませるのが効率的です。キャッシュバックの対象が100L分増えて、給油のたびの操作もいちばん軽くなります。
念のため書いておくと、これはコスモを一番に推している、という意味ではありません。通う店がENEOSや出光なら、そちらのカードのほうが確実に安くなります。近所にコスモがある方だけ、いまの特典は見ておく価値があるという話です。
決めたあと、最初にやることリスト
系列が決まったら、あとは手を動かすだけです。3社とも流れは似ていますが、つまずくポイントがそれぞれ違います。そこを先に書いておきます。
ENEOSの場合
- ENEOSカードSをウェブで申し込む(年会費は初年度無料)
- カードが届いたら、ENEOS公式アプリを入れる
- アプリのモバイルEneKeyにカードを登録する(ここまでで二次元コード決済が使えます)
- よく行く店をフォローSSに登録する(クーポンはここから届きます)
- ポイントカードを連携する(※ENEOSカードを登録した場合はできません。下記)
4番を飛ばす人が多いです。アプリを入れただけではクーポンは来ません。店をフォローして初めて届きます。
ENEOS公式アプリには、Vポイント・楽天ポイント・dポイントのどれかを紐づけて、給油のたびに貯める機能があります。ただし、登録するクレジットカードによっては連携できません。ENEOSカードがそれに当たります。公式サイトの書き方は「登録しているクレジットカードによっては連携できない場合があります」だけ。どのカードが該当するかは書かれていないので、申し込んでから気づく方がいます。
つまり、選ぶのは次のどちらかになります。
・ENEOSカードを登録する → 2円/L引きが効く。ポイントは付かない
・他社のクレジットカードを登録する → ポイントは貯まる。2円/L引きは付かない
50L入れると、値引きは100円です。還元率1%のカードなら8,000円の給油で80ポイント。ここにアプリのポイント連携ぶんが乗ります。金額としては近いので、どちらが得かは持っているカードとポイントの使い道で変わります。迷うなら、値引きのほうが読みやすい選択です。
出光(apollostation)の場合
- apollostation cardをウェブで申し込む(年会費永久無料)
- 「ねびきプラスサービス」は入会と同時に登録されます(初年度無料/2年目から550円)
- 続けるなら、会員サイト「ウェブステーション」とウェブ明細に登録する
- 出光興産アプリ「Drive On」を入れる
出光の値引き上乗せはウェブ明細とセットです。紙の明細に戻すと、ねびきプラスのほうも自動的に切れます。しかもその場合、払った年会費は返ってきません。
また、ねびきプラスは2年目から自動で年会費550円がかかります。給油量が少なくて上乗せが効かない方は、初年度のうちに続けるかどうかを決めておくのが無難です。
コスモの場合
- コスモ・ザ・カード・オーパスをウェブで申し込む(年会費永年無料)
- コスモの公式アプリを入れて、カードを登録する
- メールアドレスを登録する
- 本人認証をする(電話認証か、3Dセキュアのどちらか)
- コスモSS Payの利用を開始する
ここで止まる人がいます。かける番号はカードに登録してある電話番号で、いま使っている携帯とは限りません。実家の固定電話のまま、というケースもあります。
番号が古い場合は先に変更が必要で、手続きに数日かかることがあります。もう一方の3Dセキュア(ワンタイムパスワード)なら電話は要りません。
ちなみに、非通知設定にしている方は番号の頭に「186」を付けて発信します。

どこも最後に「アプリ」が出てくるんやな。カードだけやと半分ってことか。

そこなんだよ。カードを作ってアプリを入れてない人、けっこう多い。値引きは効いてるけど、クーポンを丸ごと取りこぼしてる状態だね。
よくある質問
Q1. 他社のガソリンカードでも支払いはできますか?
A:支払いはできます。クレジットカードとして通ります。ただ、リッターの値引きや会員価格は付きません。店でいちばん多い誤解がここです。値引きが効くのは、そのカードの系列の店だけだと考えてください。
Q2. Apple Payで払っても、カードの値引きは効きますか?
A:ENEOSと出光については、決済しているのは登録したカード本体なので、値引きはそのまま効きます。
コスモの会員価格については、公式が案内しているのはコスモSS Pay(アプリのQR決済)です。iD経由での扱いは明記がないため、確実にしたいならアプリ決済を選ぶのが安全です。
Q3. 会員価格って、結局いくら安いんですか?
A:店舗によって違うので、数字を書くことができません。これは隠しているのではなく、もともと全国一律ではないという仕組みの問題です。近所の店の看板価格と会員価格の差を、一度確かめるのが確実です。
Q4. 年会費のあるENEOSカードは損ではないですか?
A:1,375円かかるのは、1年間まったく使わなかった場合だけです。年に1回でも決済すれば翌年度は無料になります。給油に使う前提なら、実質は無料と考えて問題ありません。
Q5. カードを作らずに安くする方法はありますか?
A:あります。公式アプリのクーポンは、決済の登録とは別の機能です。アプリを入れて店を登録しておくだけで、給油や洗車の割引が届く。審査も郵送も要りません。詳しくは上の「カードを作りたくない人は、アプリだけでも下がります」に書きました。カードは作りたくないけれど少しでも下げたい、という方はここから始めるのが現実的です。ほかの下げ方はガソリン代を安くする方法5選にまとめています。
まとめ
3系列を並べて分かるのは、「どれが一番安いか」という問いの立て方そのものがずれているということです。値引きの決まり方が違うので、同じ条件で比べられません。
決め方はもっと単純です。通う店の系列で作る。そしてその系列の公式アプリを入れる。この2つで、取れる値引きのほとんどが取れます。生活費を1枚のカードに寄せている方だけ、出光の利用額連動が効いてくる。それだけの話です。
- 系列カードの値引きは、その系列の店でしか効かない(支払い自体は他社でもできる)
- カードを選ぶことは、これから通う店を決めることとほぼ同じ
- ENEOSは固定値引き。誰が持っても2円/L引きで、読みやすい
- 出光は利用額連動。生活費を寄せると上がるが、反映は翌々月から
- コスモは会員価格。金額は店舗ごとに違い、全国一律の数字はない
- 手間がいちばん少ないのは公式アプリのコード決済。会員証・クーポン・決済が1回で終わる
- 設定にかかるのは最初の5分だけ。そのあとは毎回ラクになる
- カードを作ってアプリを入れていない人が多い。クーポンを丸ごと取りこぼしている
- カードを作らなくても、アプリのクーポンだけなら審査も郵送もなしで受け取れる
- ENEOSはカードの2円/L引きとアプリのポイント連携が両立しない。どちらかを選ぶ
- 2円/L引きは50Lで100円。遠回りして買いに行くと消える
店で「面倒くさい」と断られるたびに思うのですが、面倒なのは最初の5分だけです。そのあとは、給油のたびに少しずつ返ってきます。今日か明日、給油の予定があるなら、その前にアプリだけでも入れてみてください。看板の値段より先に、そこが効きます。

コメント